「日本式セカンドオピニオン」の問題点
アメリカではセカンドオピニオンに追加でお金がかからないと聞いたら驚かれるでしょうか。一方の日本では「セカンドオピニオン外来」と称して、主治医によるファーストオピニオンの相談とは別に健康保険が適用されない自由診療として提供されているようです。今回は、アメリカにおけるセカンドオピニオンの現状を紹介しながら、日本の問題点についても書きました。
目次
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セカンドオピニオンが必要な人は誰か?
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相談する病院はどう決める?
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知れば回避できるトラブル事例
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日本式「セカンドオピニオン外来」の問題点
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セカンドオピニオンが必要な人は誰か?
セカンドオピニオンとは、主治医とは違う医師から意見を取り入れるのが元々のコンセプトです。その目的は大きく2つあります。
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診断・治療に対する見解の多様性を確保することによって、より良い医療を受けてもらうこと。
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同じ治療法でもより説明が上手な人に話を聞くことで、治療に対する理解を深めるなのでとができること。
1については、これまでも記事で説明してきた通り、西洋医学の根本的な考え方は絶対的に正しいエビデンスと絶対に間違っている科学的根拠との白黒の間にグレーゾーンがたくさんあります。
つまり、医者どうしでもそのグレーゾーンの解釈が異なる場合があります。大きく異なることはそこまで多くなくても、解釈は医師の個人的な意見や過去の経験とかに左右されますから多少の違いが生じることは避けられないのです。
白黒が明確な医療はないという前提があるので主治医に医療過誤があるとは危なくて言えないのですが、かなり怪しくて黒に近い診察をするファーストにたまに出会います。その場合は、うちの病院ではこの治療はしないといった強い言い方をするようにしています。
複数の専門家の見解を知ることで、患者さんは自分の症状や考えうる治療法に対する理解を深めることができます。
2については、主治医が言っていることがよくわからなくて、セカンドを取ったらよくわかった。しかし、実際に説明している治療内容は同じというパターンです。
国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」においてセカンドオピニオンについて解説したページがあります。そこには、まず最初に「現在の担当医の意見(ファーストオピニオン)をよく理解する」と書いてあります。
しかし、ファーストオピニオンが理解できないときこそ、セカンドオピニオンを使ってください。それは、主治医の説明が下手なせいで理解ができておらず、セカンドの説明を聞いてよく理解できるということもありうるからです。
セカンドオピニオンを利用するべきかどうかは、ファーストオピニオンに納得できているかどうかで決めるべきだと考えます。
相談する病院はどう決める?
何のためにセカンドオピニオンを取るのかを考えると、ファーストだけでは納得できないとか、理解ができないとか、他の方法を知らずに後悔をしたくないといったことが挙げられると思います。
したがって、基本的にセカンドではファーストより専門性が高い病院を求める人が多い気がします。ファーストで診断された症状をより専門的に扱っている病院でより多角的な観点から説明してくれることを期待するというものです。
しかし、必ずしも専門性が高い必要があるわけではなく、ファーストと同じレベルの病院でも違う意見が出てきます。
専門性が高い医師から話を聞く必要があるかないかは、病院を選ぶ一つの基準となると思います。では、専門性の高い医療を受けないといけない人とはどんな人でしょうか?
下の3つのポイントでいずれかに当てはまる人は専門性の高い病院を選ぶといいと考えます。
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重篤な病を罹患している人
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経過が良くない場合
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チーム医療が必要な病
重篤とは、放っておいても治らない病気だと捉えてください。がんとか、脳卒中、心筋梗塞などが該当します。これらと対照的なのが風邪です。
経過が良くない場合とは、例えば骨折した後に全然予後が良くて治らない場合、何か問題がある可能性がありますよね。
ファーストの診療に違和感があったり、納得できなかったりした場合に使うのがセカンドオピニオンだと考えてください。がんや重篤なものに限った話ではありません。
チーム医療が必要な病は重篤性と関係してきますが、グレーゾーンが多くチーム医療が必要な場合もセカンドオピニオンを取ると良いと思います。
こうした病は、白黒つけられない(治療の解が一つに絞りきれない)ので、なるべく複数の医師による診断を取ったほうがいいでしょう。
知れば回避できるトラブルや失敗の事例
セカンドオピニオンにおいて、病院・医師選びも重要ですが、最も重要なのはタイミングです。