がん治療中の運動について
がんの治療中はベッドの上で安静にしていたほうがいいのでしょうか、それとも活発に運動をしたほうがいいのでしょうか。
これまで、運動はがんの発症リスクを下げ、治療後に健康的な生活を送るために推奨されてきました。しかし、治療に対する運動の効果については、よくわかっていないことが多く特段推奨されてはきませんでした。しかし、近年の研究でがん治療と運動の関係について多くのことがわかってきました。
この記事では、以下の観点から「がん治療中の運動」についてお伝えします。
この記事でわかること
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がん治療中は運動したほうがいいのか?
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運動メニューを医師がアドバイスできない理由
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私が頼ったのは「運動のプロ」
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1. がん治療中は運動したほうがいいのか
がん治療と並行して運動をしたほうがいいのか、とよく聞かれます。
近年の研究によって、運動ががん治療に対してポジティブな効果を持っていることがわかってきています。なので、最初の質問に対する答えは、「ぜひ、運動をしてください」となります。とくに倦怠感を取り除くのに体を動かすことは効果があります。
かつて私が在籍していたMDアンダーソンがんセンターの記事によると、「がん治療中に運動することで、倦怠感、不安、抑うつが緩和され、生活の質と身体機能が向上する」ことがわかったということです。
つまり、ベッドの上で安静にしているよりも運動した方が治療に対していい影響があるということが科学的に証明されています。
また、MDアンダーソンがんセンターの同じページで紹介されていた運動は以下です。
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ウォーキング
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ジョギング
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サイクリング
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筋力トレーニング(ウェイトリフティング、レジスタンスバンド(ゴムチューブ))
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ダンス
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水泳
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ゴルフ
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太極拳
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ガーデニング
運動はがん治療に良い影響があるとのことでしたが、どのようなプロセスで治療に影響するのかも説明されています。
No one knows with certainty, but Basen-Engquist points out that exercise reduces levels of inflammation and insulin, which are linked to some cancers. Also, exercise induces angiogenesis, or the creation of new blood vessels, which could mean that more blood-driven anti-cancer medicine can be delivered to cancerous tumors. “Exercise may make chemotherapy more effective,” she says. Immune function also benefits. While cancer weakens the immune system, exercise boosts the circulation of immune cells that attack cancer. It may even help powerful immunotherapy treatments that work better.
ここで指摘されている運動が治療に与える効能は、「癌と関連する炎症とインスリンを減らすこと」と「運動によって新しい血管ができることで、血液によって抗癌剤を腫瘍まで届けられるようになること」、「がんによって低下した免疫を回復できること」の3つです。
治療をしやすくなることに加えて、怪我をしにくくなる点も運動することのメリットです。一部の化学療法の最中は出血を抑える効果がある血小板が少なくなっています。転倒して出血をすることの危険性が高まっているのです。だから、運動をすることで転倒しにくくなることはとても重要です。
2. 医師がアドバイスできない理由
運動ががん治療に対していい効果をもたらすことはわかりましたが、では、どのくらいの運動をすればいいのでしょうか。
運動時間については「150 minutes of exercise per week.(週150分のエクササイズ)」が推奨されており、運動強度は「you to talk, but not sing(話せるけど歌えない)」くらいがいいと紹介されています。わかりやすい目安ですね。
しかし、同時にこうも書かれています。