がん治療による「食欲不振」への対処法

私が闘病中にプッチンプリンとバーガーキングを好んだのはなぜか。
上野直人 2023.02.07
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がんの治療中は化学療法による副作用やストレスといったことが要因となり、食欲が減退することがあります。私自身も患者だったときは、特に「味覚の変化」に大変苦しみました。今回は「味覚の変化」に焦点を当てて、具体的な対処法や事例をご紹介していきます。

この記事でわかること

  • 食欲減退が常に問題とは限らない

  • 「味覚の変化」による食欲減退がなぜ起こるのか?

  • 必要なのは「周りの理解」

  • がん治療中に避けた方がいい食べ物・食べ方

***

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どのような場合で食欲減退が問題となるのか

人間の体には栄養の蓄積があるので、ある程度健康な人達であれば、食欲が減退して食べる量が減ること自体がすぐに問題になることはありません。

もちろん、日常的な食生活の偏りや少食によって、栄養やエネルギーが不足している場合は問題となりますが、非常に稀なケースです。

むしろ、無理に食べようとすることで嘔吐を誘発するので、食べないほうがいいという場合すらあります。

短期的に治療を円滑に進めるためにあえて食べないという選択です。短期というのは、1〜2週間程度でそのくらいであれば一般的に人間の体は食事を取らなくても大丈夫と言われています。

短期のケースでも水分補給はとても大事になります。脱水状態に陥るとかなり危険ですので、水分だけはこまめに接種することが大切です。要するに短期的に治療を円滑に進めたい場合は、水分補給だけ気をつけて無理して食べないほうがいいという判断をする場合があります。

幸いなことに水は味覚の変化による影響を受けづらいです。しかし、味がついた途端に飲めなくなることもあります。例えば、私が治療を受けていたときは、コーラが飲めなくなりました。つまり、コーラを美味しく思えなくなったということです。

水分補給という観点でいうと、理想的なのはスポーツ飲料です。アクエリアスやポカリスエットが日本では有名だと思います。要するに、砂糖と塩が取れる飲料がいいとされています。

一方で、長期的な治療という観点では、適量の食事は非常に重要となります。それは治療に必要なエネルギーを補うためです。先ほど言及した蓄積というのは、無限にあるわけではありませんので、どこかで必ず補給が必要となります。本記事はそうした「長期的な治療における食欲減退の問題ついて」ということになります。

食欲減退がなぜ起こるのか?

がん治療における化学療法(抗がん剤など)によって食欲自体が減ることと、食欲があっても食べられなくなることが主な原因として挙げられます。

国立がん研究センター 東病院によると、主な食欲減退の理由として次の5つが紹介されています。

1. 消化・吸収機能の低下
 便秘・下痢、お腹の張り、もたれ感、吐き気・嘔吐
2 . がん治療の副作用症状
 吐き気・嘔吐、口内炎・食道炎、味覚変化
3. 噛む・飲み込むが上手くいかない
 高齢、義歯が合わない、口腔・食道の術後
4. 全身状態の不良
 腫瘍から食欲を低下させる物質が出る影響、強い倦怠感、発熱、疼痛(とうつう:ずきずきとうずくような痛み)、よく眠れない
5. 精神的負担
 不安、落ち込んだ気持ち

今回はこの中にも列挙されている「味覚の変化」に絞って書いていきます。

また、同じページでは、食欲減退への対処法として次のような8つのアドバイスも掲載されています。

1. 量を控えめにし、数回に分けて摂る
2. 体調の良い時間帯に食べる
3. 消化の良い食品(PDF:136KB)を中心に摂る
4. さっぱりと食べられるメニューにする
5. 口当たりの良いものを選ぶ
6. くさみを消す、冷ます等 “におい”を抑える
7. いつでも食べられるよう食べやすいものを準備する
8. こまめな水分摂取を心掛ける

この中でも今回は、7つ目の項目「食べやすいもの」をどう見つけるのかについて、医師としての知見と私自身の経験をもとにお伝えできればと考えています。

まず、味覚の変化にも3つの種類があります。ひとつは味があまりわからなくなるケース、もう一つは逆に味がわかりすぎてしまうケース、そして味の変化です。

一番目の味がわからない場合の解決策として、味を濃くするというということが有効な場合があります。要するに塩や砂糖、スパイスなどをいつもよりも多めに入れてみるということです。

味がわかりすぎる場合は、もう少し工夫が必要です。味がわかりすぎるということは、それぞれの味が独立して調和しなくなるために、まずいと感じてしまいます。

このケースでは、単純な味の方が食べやすい傾向があります。例えば、カップラーメンは患者さんにも人気の食べ物の一つです。塩気が強いので、味がわかりすぎる人だけでなく、味がわからなくなる人からも需要があります。

私自身が治療を受けていたときは、贈答用の高級プリンは食べられませんでしたが、プッチンプリンは非常に美味しく感じたので、たくさん食べました。プリンに限らず、高級な品よりも安価な食品の方が食べやすい傾向にありました。

それらの他に食べていたものとしては、ソーダ味のシャーベット系のアイスやバーガーキングなどもよく食べていました。どれも比較的安価に手に入るものでした。

最後に、味の変化は、人により様々であり、これまで嫌いの味も含めて、もう一度何を味的に何を好むのかをレビューするのが良いと思います。

冒頭で水分補給が大事と書きましたが、私が患者だったときはゲータレードをよく飲んでいました。理由はたくさん種類があって、自分に合う味を選ぶことができたからです。日本では手に入れにくいかもしれませんが、そうした多くのフレーバーを揃えている飲み物や食べ物を飲み・食べ比べしてもらうのもいいかもしれません。

ここまでかなり具体的な原因と想定される対処法を紹介してきました。しかし、これは私が医師として実際に目撃したものや聞いた話に過ぎないので、皆さんにそのまま当てはまるとは限りません。味覚の変化は人それぞれ異なるので、本当に効果があるのかどうかは、患者さんご本人に確かめてもらうまでわかりません。したがって、他の患者さんの事例を試しながら、自分に合うものを見つけなければいけないのです。

必要なのは「周りの理解」

食欲が減退すると、好きだった食べ物が食べられなくなったりします。そして、あれもこれも食べられないと言っているうちに家族やケアギバーはだんだんと嫌気がさしてきます。

そこで「わがままを言って」などと思わずに、いろいろ試すのに付き合ってあげてください。本人たちは食べたくないのではなくて、本当に食べられないのです。

先ほども書いたように、味覚の変化は千差万別なので、食べられるものを試して探すしかありません。人によっては、かなり時間がかかる人がいても全く不思議ではないのです。

病院食もバランスを優先したメニューばかりなので、基本的には美味しくありません。もともと美味しくないのですが、不思議なことに味覚が変わった後でも美味しくなりませんでした。また、医師たちが自分で経験していないからか、食事に関する病院の対応はそこまで手厚いものとは言えません。病院食が美味しいと感じられる人はそれでいいのですが、そうならない場合は次の優先順位で食べ物を摂取するようにしてください。

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  • 避けた方がいい食べ物・食べ方

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